1 研究会設立の趣旨

 近年、毎年25万から23万件の夫婦の離婚があって、その6割近くに未成年の子があり、毎年約24万人くらいの子どもたちが親の離婚に巻き込まれている。2011年の厚生労働省による全国母子世帯等の調査結果でも、子の面会交流の取り決めのある母子世帯は23.4%、面会が続いているものは27.7%、母親との面会交流の取り決めがある父子世帯は16.3%、面会交流が続いているものは37.4%しかなく、多くの子どもたちが親との交流を断たれてしまっている。また、同じ調査で、養育費の取り決めをしているのは母子世帯で37.7%であり、離婚した父親から養育費の支払いを現在も受けているのは19.7%しかなく、支払額も平均4万円程度ときわめて低い水準であった。
  2011年5月に、民法766条の一部改正があり、ようやく離婚に際して、面会交流と子の監護に要する費用(養育費)について明文の規定が入り、2012年4月から施行されるとともに、協議離婚届の右下に、面会交流と養育費の取り決めの有無のチェック欄が設けられるなどの改善もみられた。ただし、これは離婚届の受理要件ではないため、開始から1年間の法務省の調査結果では、チェックした者は77%で、取り決めがあるとした者は1年間で徐々に増えたものの未成年子のいる夫婦の離婚のうち55ないし56%にすぎなかった。さらに、面会交流や養育費をめぐる家庭裁判所の調停の新受申立事件数は、ここ10年で3~4倍にも増えており、紛争も熾烈化し、解決も長期化、困難化しているといってよい。
  このような未成年の子どもをめぐる厳しい状況をみるかぎりでも、子どもの最善の利益や親と交流を続ける権利、心身とも健やかに成長発達する権利を保障するためにも、現在の協議離婚制度の運用を大幅に見直し、親権・監護(面会交流・養育費)等の子どもをめぐる取り決めを促進し、親の離婚や別居、未婚などのさまざまな事情のなかにある子どもが安心して暮らせる養育環境の確保のための法制度の整備や社会的な支援制度の充実が何より求められている。以上のような現状認識と共通理解に立ったうえで、今般、子どもの問題に取り組む団体のメンバー、研究者、弁護士、元裁判官、行政の責任者ら有志が集まり、専門的な知見や豊富な経験をベースとし、叡智を結集して、子どもの幸せを実現するための養育支援制度につき実証的総合的に検討し、また政策的な視点からも具体的なモデルを提案する機動的かつ効果的な共同研究組織を立ち上げることにした。

2 研究会の事務局等

 養育支援制度研究会は、座長1名、幹事1名で運営する。事務局は、当面、早稲田大学法学学術院に置く。座長は、若林昌子(元福岡家裁所長・現家庭問題情報センター理事長)、幹事は棚村政行(早稲田大学教授)とする。

3 研究会のスケジュールと研究計画

 養育支援制度研究会は、当面、1か月~2か月に1回程度のペースで開催する。養育支援制度研究会では、行政・民間・司法の行う情報提供・相談(紛争予防・教育啓発)機能、合意形成(紛争解決)支援機能、合意・判断内容実現(執行・実施支援)機能に分け、それぞれについて、最も効果的で適切な当事者支援の具体的モデルを提示し、モデルの実施状況を検証し、その効果測定を行う。
 さらには、自治体による養育費立替払い制度と回収制度の構築、自治体と法テラスの連携、自治体と家庭裁判所の連携による合意形成支援と合意内容実現支援など、具体的な連携モデルを提示し、当事者支援における「子の最善の利益」の現実化方策について提言する。

以上

2013年5月20日
                        早稲田大学 棚村 政行